前回は記事では、脂質の種類や働き、そして食品についてお伝えさせていただきました。
前回、各脂肪酸の生理作用について解説してきました。
今回はもっと深掘りして、今後の健康管理役立てていただきたいと思います。
特にオメガ3と6の違いをお伝えさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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目次
脂質の生理作用
脂質の生理作用と解説する上で欠かせない物質としてエイコサノイドという生理活性物質があります。
エイコサノイドは、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸(EPA)のような広義の必須脂肪酸をもとにして生成される生理活性物質です。
オートクリンあるいはパラクリン機構で近傍の細胞に作用します。
エイコサノイドのもつ生理作用にはさまざまなものがあります。
例えばプロスタグランジンE2(PGE2)は主に炎症に関わる生理作用として重要な役割を果たします。
オメガ6系とオメガ3系の油の摂取によって作用も変わって生成されるエイコサノイドも違い生理作用も変わってきます。
つまりエイコサノイド合成は食事により変わってくるという事です。
細胞膜の脂肪酸合成パターンは脂肪酸の摂取により変化する事が研究により証明されています。
※オートクリンとは自己分泌、パラクリンは傍分泌のことをいいます。
それぞれ、自身の細胞あるいは近傍の細胞に局所的に作用する機構です。
パラクリン機構は血液などを介さずに直接細胞間を行ききし生理活性物質を伝達する形です。
炎症メディエーターとして働く脂質
ヒトはエイコサノイドの生成に必要なリノール酸とα-リノレン酸を体の中で生成できません。
それで、オメガ6系とオメガ3系は必須脂肪酸と言われています。
この二つの油がどのように体の生理作用に必要なのかを見ていきましょう。
オメガ6系
サラダ油・ゴマ油・ひまわり油などのオメガ6系からエイコサノイドが生成される過程は以下になります。
1系統エイコサノイド
リノール酸(C18:3)⇨ γリノレン酸(C18:3)⇨ ジホモ γリノレン酸(C20:3)⇨1系統エイコサノイドを生成します。
その作用は炎症誘発する作用もあれば炎症収束の作用もあると言われています。
2系統エイコサノイド
リノール酸(C18:3)⇨ γリノレン酸(C18:3)⇨ ジホモ γリノレン酸(C20:3)⇨アラキドン酸(C20:4)⇨2系統エイコサノイドを生成します。
その作用は炎症誘発・血小板凝集亢進です。
※1系のエイコサノイドの元になるɤ-リノレン酸は、上の図のようにリノール酸から体内で作ることができます。
ところが、リノール酸からɤ-リノレン酸に変換させる酵素の活性はヒトでは高くなく、しかも下記のようないろいろな因子によって阻害されます。
- 不飽和脂肪酸のバランスが崩れた食事
- 飽和脂肪酸の多い食事
- マーガリンやショートニングなどのトランス型脂肪酸を多量に含む食品
- アルコールの過剰摂取
- 加齢、糖尿病、感染など
- 補因子としての、亜鉛、ビタミンB6、マグネシウムの欠乏
- ビタミンC、ナイアシンの不足
オメガ3系
3系統エイコサノイド
α-リノレン酸(C18:3)⇨エイコサテトラエン酸(C20:4)⇨EPA(C20:5)⇨3系統エイコサノイドを生成します。
その作用は炎症抑制・血小板凝集抑制です。
プロテクチン・レゾルビン
α-リノレン酸(C18:3)⇨エイコサテトラエン酸(C20:4)⇨EPA(C20:5)⇨DHA(C22:6)⇨プロテクチン、レゾルビンを生成。
その作用はプロテクチン(炎症収束)・レゾルビン(炎症収束)と共に炎症収束に働きます。
※オメガ6系もオメガ3系も摂取し代謝される時に酵素の働きが必要です。
その時に必要な保因子として栄養素は欠かせません。
必要な捕因子は・・・・
亜鉛、マグネシウム、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンCになります。
現代人の食事はリノール酸が多くなりがちで過剰にアラキドン酸を生成してしまいます。
過剰なリノール酸や飽和脂肪酸を控えればアラキドン酸の生成は抑制されます。
やはり食生活には気をつけた方が良いと考えられます。
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リノール酸を多く含むオイル
リノール酸が多く含まれている代表はサラダ油です。
サラダ油の主な原料は・・・
菜種(アブラナ)、大豆、綿実、ごま、紅花(サフラワー)、ひまわり、トウモロコシ、米(米糠)、落花生、グレープシードオイル
αリノレン酸 | リノール酸 | オイレン酸 | 飽和脂肪酸 | その他 | |
紅花油 | 1 | 75 | 16 | 7 | 1 |
菜種油 | 9 | 19 | 64 | 6 | 2 |
米油 | 1 | 35 | 43 | 19 | 2 |
グレープシードオイル | 1 | 63 | 16 | 10 | 10 |
コーン油 | 1 | 51 | 30 | 15 | 3 |
綿実油 | 1 | 54 | 20 | 23 | 2 |
大豆油 | 7 | 50 | 25 | 15 | 3 |
主なサラダ油の脂肪酸組成(単位:%)
バランスで考えると菜種油や米油がリノール酸が少なく良さそうですね。
肥満の問題点
動物の持つ脂肪は飽和脂肪酸が豊富です。
ヒトの体脂肪は体温(常温)でも固形を保つため飽和脂肪酸が豊富です。
肥満だと過剰な飽和脂肪酸が体の内にあるという事になります。
自然免疫に関する細胞はPPP(パターン認識受容体)を用いて病原体を認識しています。
PPPは病原体固有の構造(PAMPS:Pathogen-associated molecular patterns)のセンサーです。
その中にTLR(トル様受容体)があります。
ここで感知し、炎症を誘発するIL -6やTNF –αを分泌します。
脂肪細胞から放出される遊離脂肪酸(特にパルミチン酸)はTLR2、4に結合することが知られています。
そのため飽和脂肪酸過剰、肝臓での中性脂肪合成過剰も自然免疫を過剰に活性し、炎症性サイトカインの分泌を促進し、慢性炎症を引き起こす事に繋がります。
やはり高脂肪食や肥満は体の不調を招いてしまう恐れがあるので注意が必要ですね。
体の中のEPAとDHAは傷みやすいのか?
オメガ3系の油は体外の空気に触れる環境だと酸化しやすいので開封後すぐに摂ることは有名ですね。
でも体の中にあるEPAやDHAは痛みやすいのかは気になりますね・・・
結果としたらそうでもないぞという事です。
特にDHAは脳内にも多く、多価不飽和脂肪酸は生体内にも多く存在しています。
・生体内は酸素分圧が低い。
・抗酸化酵素が存在している。
・生体内の水が折れ曲がり部分に結合し安定する。
などの影響が考えられるからです。
まとめ
今回はエイコサノイドという生理活性物質やオメガ3や6について勉強していきました。
どんな油を摂るかによって生成されるエイコサノイドは違い体に与える影響も変わってきます。
やはりリノール酸リッチな食事、過剰な飽和脂肪酸は炎症を誘発してしまいます。
そして肥満も遊離脂肪酸が大量に発生し、トル様受容体に結合し、TNF-αやIL-6を分泌し炎症を誘発してしまうので注意が必要です。
加熱調理の必要な料理はオリーブオイルや米油が適していると思います。
炎症の抑制にはオメガ3系の油の摂取が望ましいですが、やはり大事なのはリノール酸リッチな食事を減らす。
飽和脂肪酸の摂取を減らす事が大事です。
火事場に水をかけてもすぐには鎮火しません。
火事が起きないように予防をしていくのが大事です。
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