前回は脂質の構造や種類など脂質の基礎について解説してきました。
今回は脂肪酸の機能・特徴・食材について解説していきます。
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目次
脂肪酸の機能
分類 | 名称 | 炭素数 | 二重結合 | 所在 |
短鎖脂肪酸 | 酪酸 | 4 | なし(飽和) | 乳脂 腸内細菌(善玉)が生成 |
カプロン酸 | 6 | なし(飽和) | 乳脂 | |
中鎖脂肪酸 | カプリル酸 | 8 | なし(飽和) | ココナッツ油、パーム油、乳脂 |
カプリン酸 | 10 | なし(飽和) | ココナッツ油、パーム油、乳脂 | |
長鎖脂肪酸 | ラウリン酸 | 12 | なし(飽和) | ココナッツ油、パーム油、乳脂 |
ミスチリン酸 | 14 | なし(飽和) | ココナッツ油、パーム油、乳脂 | |
パルミチン酸 | 16 | なし(飽和) | パーム油 | |
オイレン酸 | 18 | 1(不飽和) | オリーブ油、菜種油 | |
リノール酸 | 18 | 2(不飽和) | 大豆油、コーン油 | |
リノレン酸 | 18 | 3(不飽和) | 亜麻仁脂、えごま脂 | |
エイコサペンタエン酸 | 20 | 5(不飽和) | 魚油 | |
ドコサヘキサエン酸 | 22 | 6(不飽和) | 魚油 |
前回のおさらいになるのですが、下の図は脂肪酸の種類を各脂肪酸毎に分けてます。
短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸により体に作用する効果が違うとされています。
基本的には短鎖脂肪酸の方が、長鎖脂肪酸より分解がされやすいです。
それぞれの脂肪酸の違い
油の主成分である「脂肪酸」は、炭素・水素・酸素から成り立ってます。
下のように炭素が鎖のように連なった形をしていています。
その鎖の長さによって長鎖・中鎖・短鎖に分類されます。
炭素数が6以下のものを短鎖脂肪酸、炭素が8~10の脂肪酸を中鎖脂肪酸、炭素数が12以上のものは長鎖脂肪酸といいます。
鎖が長さによって脂肪酸の種類も違い、それぞれの作用も違います。
中鎖脂肪酸はMCTオイルなどに代表されるオイルですが、これについてはまた後ほど解説していきます。
そして二重結合によりその機能差も生まれます。
二重結合とは
ここでは二つの脂肪酸の構造を使って説明していきます。
ここではとEPA(魚油)とオイレン酸(オリーブオイル)の比較になります。
この二つの違いは二重結合の違いになります。
二重結合数の違いによる「構造の差」はそのまま「機能の差」となり、細胞膜の柔軟性の違いとなります。
柔軟な細胞膜は様々な受容体をより多く発現できるので機能が高くなります。
ガチガチの細胞膜だと栄養素を取り込むのは難しくなりますが柔らかい細胞膜だと、より栄養素が細胞内外への行き来が起こりやすい=代謝が良い、と言えるのです。
この二重結合の違いは油を摂取する時に意識した方がいいポイントです。
※気をつけた方がいい油!!トランス脂肪酸
よくトランス脂肪酸ついては植物油に水素を添加、構造的に強化した油です。
日持ちが良くなるので様々な加工食品で使われています。
しかしトランス脂肪酸は細胞膜の柔軟性の低下に繋がり、様々な成人病のリスクを上げてしまう油として悪名高いです。
毎朝食に菓子パンを食べるとか、毎食で揚げ物を食べる、フライドポテトを頻繁に食べるなどはしないようにし、なるべく遠ざけた方がいい油とは言えます。
細胞膜
細胞膜の流動性増加が栄養素の反応性を高める!!
全ての細胞が持つ細胞と外界との境界面であり、内外の物質の輸送を調節する半透膜構造です。
この構造は選択的透過性(特定の物質のみを透過させる仕組み)を持っています。
細胞膜の脂肪酸構成パターンは脂肪酸の摂取により変化するとされています。
そのため二重結合が多いω-3系の脂肪酸を増やすことで細胞膜の柔らかさ(流動性)が高くなると考えられます。
ですのでオメガ3系の油は受容体やチャネルを埋め込みやすく、透過性が上がり栄養素の反応性が増すと言われています。
どんな油を普段から摂取するかが健康に大きく関わってきます。
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各脂肪酸の種類と食品
下記表は各脂肪酸の種類・食品・特徴などになります。
是非、これからの食事の時の参考にしていただけたらと思います。
脂肪酸の種類 | 含まれる製品 | 動きや特徴など |
飽和脂肪酸 | 牛肉、豚肉、鶏肉、卵黄 クリーム、バター、乳製品、 MCTオイル | 動物の脂肪に多く含まれているため「動物性脂肪」と呼ばれる。 炭素数12個以上の飽和脂肪酸の融点は40℃以上であり、常温では個体となる。 |
一価不飽和脂肪酸 | オリーブオイル、 アーモンド、アボガド 菜種油 | 加熱に強く、酸化しにくいため加熱調理に向いている。菜種油はオイレン酸(一価不飽和脂肪酸)が豊富だが、グルコシノレートなどの懸念がある。 |
多価不飽和脂肪酸(ω-6) | 紅花油、ひまわり油 大豆油、コーン油 | 体内で生成できないため必須脂肪酸と呼ばれる。 リノール酸、アラキドン酸が含まれる。 |
多価不飽和脂肪酸(ω-3) | 亜麻仁油、えごま油 魚油 | 体内で生成できないため必須脂肪酸と呼ばれる。 αリノレン酸、EPA、DHAが含まれる。 |
飽和脂肪酸は動物油とも言われていおり摂り過ぎると体の炎症を助長してしまいます。
MCTオイルは抗炎症効果、抗菌効果(カンジダ除去)を持つ油と言われています。
一価不飽和脂肪酸のオイレン酸(オメガ9系)は熱にも強く、安定しており加熱調理でも安心して使えるのが特徴です。
多価不飽和脂肪酸で必須脂肪酸と言われるオメガ3とオメガ6の油ですが、それぞれ全く機能が異なります。
オメガ3系は炎症・アレルギーの抑制、血管拡張、細胞膜の柔軟性向上に繋がります。
そして、オメガ6系は炎症・アレルギーの亢進、血管硬化、弾性の低下など一見すると悪い影響しかないように感じます。
しかし、炎症が起きなければ筋肉の合成も進まないし、炎症が起きないと体の修復や病原菌が侵入した時の免疫機能も十分に働かないので炎症はすごく重要な体の生理反応です。
ただ、それが慢性的に起きると問題が生じるわけです。
引用元:一般社団法人 東京顕微鏡院
まとめ
今回は各脂肪酸の機能・特徴・食材について解説しました。
現代人は高脂肪食・ストレスなど体が慢性炎症を起こしています。
そして加工食品なども増え、気づかない間にオメガ6系のリノール酸を過剰摂取してしまっており、必須脂肪酸のバランスも崩れてしまっています。
その事により細胞膜の柔軟性は低下し、栄養素の吸収も上手くいかずに様々な不調や疾患のリスクが上がっています。
意識的にオメガ3系の油を摂取することも大事です。
また動物性油も摂り過ぎると体に炎症が起きてしまいますが、MCTオイルは抗炎症・抗菌効果も期待できます。
食事の調理加工は少なく、調理油はオリーブオイル、サラダやスープにはオメガ3系油やMCTオイルなどを使うと良いと思います。
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