糖質の量的問題と質的問題
前回まで、糖質の基礎や分類について一緒に学んできました。糖質の基本的な考え方と血糖値の変化で糖の行き先も変わるし、ホルモンの作用も変わってくる事を解説していきました。今回は、もう少し踏み込んだ、糖質を摂ることによって分泌されるホルモンと、質的問題と量的問題について解説していきます。食事により取り込まれた糖は血液の中に入り、一時的に血糖値が上昇します。この時に分泌されるのが、一度は聞いた事のあるホルモンであるインスリンです。
インスリンの作用

食事により取り込まれた糖は血液の中に入り、一時的に血糖値が上昇します。その血糖値を抑制する時に分泌されるのが、インスリンです。
インスリンとは?
膵臓ランゲルハンス島β細胞から分泌されるペプチドホルモンの一種です。
※ペプチドとはアミノ酸の鎖が一本状に繋がった集合体です。
血糖値の恒常性維持に欠かせない血糖値下降を引き起こす唯一のホルモンです。食事による血糖値上昇に伴い分泌され、インスリンレセプターと結合し、糖輸送体(GLUT-4)の作用を促します。

※GLUT-4は細胞に糖質を取り組む役割をしてます。正確に言うとインスリン自体が糖を取り込むのではなくインスリンが分泌され受容体で作用してからGLUT-4貯蔵小胞を刺激し、GLUT-4が分泌され細胞膜に移動し糖質を細胞に取り込む為のお手伝いをしています。
※肝臓へのグルコース取込みはGLUT-2、脳と赤血球への取込みはGLUT-1でありインスリンの調節を受けません。
インスリンの役割
・筋肉、肝臓でのグリコーゲン合成促進や糖新生の抑制
・中性脂肪合成の促進、脂肪組織へのグルコースの取込み促進、分解抑制
・骨格筋にアミノ酸の取込みやタンパク質合成を促進する。
・細胞の成熟(卵子:卵細胞や赤血球)にも必要、低血糖では低タンパクが改善されません。
機能性低血糖

食後5時間以内に60分間で血糖値が50㎎/dlの降下が起こる血糖値のジェットコースター状態。これを機能性低血糖と呼びます。コルチゾール、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が過剰に分泌され糖新生を引き起こされます。それにより機能性低血糖を起こしている人は、興奮、緊張、不安、恐怖といった精神状態に陥り、交感神経が優位になり、自律神経の乱れに繋がり、心身の不調へと繋がります。
※コルチゾールやカテコールアミンはストレスホルモンと呼ばれるが、実際の動きは抗ストレスです。
※精製糖摂取の増加は機能性低血糖を引き起こしコルチゾールの過剰分泌に繋がり副腎を疲労させます。
二つのタンク:肝グリコーゲンと筋グリコーゲン
グリコーゲンは2つのタンクに貯蔵されます。
以下の2つになります。
肝グリコーゲン

血糖調整のためのグリコーゲンであり、主に血糖値の調整に使われます。
グリコーゲン貯蔵量はおよそ80〜120gです。
筋グリコーゲン

筋肉に貯蔵され、主に運動時のエネルギー源となります。筋肉量によって異なりますが、約300~500g程度蓄えられます。
グリコーゲンヒエラルキー

グリコーゲンは以下の順番で貯蔵されます。
①骨格筋
②肝臓
③脂肪細胞
筋肉量が多いほど糖質の取り込み量が多くなるので、ダイエットでも筋肉量は必要になります。
※糖尿病でも運動が大事だと言うのは糖の取り込みは骨格筋から始まり血糖値が下がるからです。
※ヒエラルキーとは階層の事です。最上階が骨格筋です。
糖質の質的問題と量的問題

ここからは2つの問題についてです。
今回の記事で一番重要な所です。
質的問題
糖質の種類によって身体への影響や代謝経路は異なります。特に「ブドウ糖」「果糖」「でんぷん」などは、それぞれ吸収速度やホルモン分泌への影響が違うため、目的に応じた質の高い糖質選びが重要です。
お勧めは、血糖値の急上昇を抑え、肝臓や筋肉のグリコーゲン補給に適した「でんぷん」(穀物・イモ類など)です。
量的問題
いくら「良質な糖質」であっても、摂り過ぎれば代謝に負担がかかります。特に糖質だけの食事(例:朝にパンとジュースのみなど)は、機能性低血糖を引き起こしやすくなります。
「でんぷん」は確かにクリーンエネルギーではありますが、摂取する際には、食物繊維やたんぱく質、脂質とバランスよく摂ることが重要です。
※「糖質を摂ると元気が出る」と感じるのは、高血糖状態による一時的な興奮状態(ストレス対処モード)であることが多く、必ずしも健康的な状態とは限りません。
まとめ

今回は、糖が細胞内へと取り込まれる流れを解説していきました。
基本的に糖の取り込みに必要な栄養素は亜鉛・マグネシウム・ビタミンB群です。
インスリンはペプチドホルモンであり、高濃度の亜鉛が含まれることによって糖を細胞内に取り込む作用が強くなります。そしてマグネシウムとビタミンB群は糖質(グルコース)をATPというエネルギーに変える時に絶対に必要な栄養素です。
日常生活では、まずは精製糖を控え、未精製の穀物(玄米・全粒粉など)を中心としたバランスの取れた食事を心がけましょう。